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医療・看護の変革とインフォームド・コンセント
佐伯 みか
1
1東京大学医学部保健社会学教室
pp.176-177
発行日 1997年2月1日
Published Date 1997/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905281
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患者の目から見たインフォームド・コンセントとは!?
医療を観る社会の目が変わってきた.社会を観る医療の目も少しずつ変わり始めている.がんの告知や臓器移植,人工蘇生術や生殖医療技術といった問題がつぎつぎと医療現場という閉ざされた世界から社会へと露呈され,市民は従来医療に寄せてきた「安心」や「信頼」に疑問符を打った.身体を最も重視する従来の医療システムでは,個人の多様な意思や意向を尊重するのが難しいことに気付いたのである.最近ではそのような社会の変動を察知し始めた医療者が「インフォームド・コンセント」「QOL」「患者の満足感」といった言葉を自分たちの医療行為や医学研究の最大のモチベーションとして提示する傾向を盛んに見せ始めている.
ところが実際には,それらの定義は厳密には統一されておらず,どのように医療現場で生かしたらよいのか,いまだその方向性は模索中の段階にあるのが日本の現状である.概念ばかりが先行してしまい,具体的に何をどうしたら患者にとって有効な「インフォームド・コンセント」となるのか,また「QOL」「患者の満足感」が得られることになるのかについては,ほとんどわかっていない.
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