特集 家族にどうかかわるか
家族をとらえる視点—現代家族の実態と動向
関井 友子
1
1文教大学
pp.48-52
発行日 1997年1月1日
Published Date 1997/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905254
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに:看護学の家族への接近
看護学では患者個人から患者の家族を含めて対象とする必要性が,いくつかの点で指摘されている.第一に,患者の健康状態が家族の健康状態に影響を与え,逆に家族の健康状態が患者自身の健康に影響を与えるといった相互作用の観点が,看護や介護において有効であること.第二に,従来の施設中心の医療体制から在宅ケアの志向性が高まり,生活の場としての家族とその家族支援がクローズアップされていること.第三に,がん告知や人生の終末に関することがら,安楽死や尊厳死の問題および脳死・臓器移植問題など新たな「死」の問題などにかかわるインフォームド・コンセントが求められるようになってきたこと.家族単位での認知や合意,判断が以前にもまして必要になってきたこと.これらの背景には,QOL(生活の質)の向上という目標があり,「個人の生活の場である家族」が重要視されている.これらをふまえて,看護の対象として家族をとらえるために前提となる視点を論じていこう.
家族は私たちにとって最も身近な存在である.それゆえ対象となる家族へのアプローチが,それぞれがいだいている家族像を前提としたものにおちいる危険性がある.また,近年の家族への関心の高まり,家族への人々の思いの強さ,最も大切な事柄として家族の位置づけ,家族を価値的にとらえる傾向は,心の通う満ち足りた家族関係として,その一面だけを過度に強調してはいないだろうか.
Copyright © 1997, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.