連載 当世フェミニン事情—ゆれる女性たち・4
人生なかばにして得た女性のアイデンティティ
高畠 克子
1
1東京都精神医学総合研究所
pp.1186-1189
発行日 1995年12月1日
Published Date 1995/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661904970
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今月は,40年来心にわだかまっていた家族に対する気持ちが,夢の分析とアドラーの早期回想(後述)をもとにして氷解していったDさんを紹介しようと思う.
Dさんは,50歳を少し過ぎているが,ずっと仕事を続け,社会的にも活躍してきたエネルギッシュな女性である.家族は夫と1匹のペットで,お互いに尊重し合いながら円満に過ごしている.ところが彼女の生まれ育った家庭は,心理的な面で人間関係が複雑で,このことについてなんらかの気持ちの折り合いをつけないと,自分のこれからの人生が先に進まない感じがする,と相談に来られた.特に,自分でも腑に落ちないほどの怒りや感情が,突然人前で爆発しそうになったり,実際に爆発して,そのあとみじめな気持ちや自己嫌悪に陥ったこともあったという.ここまでだと,少々ぜいたくな悩みで「私には関係ない」と読み飛ばされそうだが,もう少し読み進んでいただきたい.
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