特集 看護の質を評価する試み
看護ケアの質を考える
高田 早苗
1
1聖路加看護大学大学院博士課程
pp.114-121
発行日 1994年2月1日
Published Date 1994/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661904462
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なぜ「質」への関心が高まってきたのか
この数年来,保健医療をサービスという側面から見直す動きがでてきた.食事の時間や内容・選択の可能性の面での改善,産科病院における妊婦への水泳教室の付加的サービスなどもこの一環と見ることができるだろう.看護も例外ではなく,ケアの改善や質といった表現を目にする機会が増えてきている.プライマリナーシング,看護診断の導入,看護理論の活用などの努力も等しくその目的は質の高い看護ケアの提供におかれている.なぜ,今「質」への関心が高まりを見せてきたのだろうか.
この根底的な要因として考えられるのは,わが国の社会全体の変化がある.脱高度成長と人口の高齢化は,経済不況という問題を抱えながらも,生活や環境に目を向ける質的な変化を目指さざるをえない状況をもたらしている.量的な充足を求める時代から本当の豊かさとは何かを問う時代へ移ったのである.科学技術的発展やそれによる解決はある程度限界に達し,これに代わるもの,越えるものを求めている.このことは保健医療の中でも,単に疾病の治療ではなくQOLを求める動きとして起こってきている.急性期疾患を中心とするキュアから,慢性病や難病患者を焦点とするケアへの転換である.「看護婦不足」の社会問題化はこのような背景のもとに,ケアの担い手への関心として生まれてきたとも考えられる.
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