連載 ケーススタディ[ナースのための心理的アプローチ]・26
「脳腫瘍があるのに違いない」—精密検査を執拗に要求するOさん
渡辺 俊之
1
,
城井 良子
1
1皆川記念病院精神科
pp.150-153
発行日 1991年2月1日
Published Date 1991/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661904111
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Oさんのプロフィール
生活歴:63歳.元会社役員で2年前に退職した.26歳の娘は昨年結婚して,現在は妻と2人暮らしである.
現病歴:若い頃より健康には人一倍気を遣い,健康食品や健康飲料に関する知識も豊富で,職場で部下の健康管理にも積極的に取り組んでいた.退職を控えた2月,通勤途中に数分間,不快感を伴う頭痛を感じた.かかりつけの医師に相談したが「気にすることはない」と言われた.しかし頭痛は続き,範囲は右顔面にまで拡大した.結局,A総合病院に入院して検査を受けた.脳波からCTスキャンまで—通りの検査が行なわれたが異常は認められなかった.家族や同僚たちは「何ともなくて良かったじゃないか」と言ってくれたが,症状は全く消失しなかった.Oさんの「原因探し」の病院通いが始まったのはその後である.何箇所かの病院を転々とした後,筆者が精神科コンサルタントとして勤務するT大学病院に精査目的で入院してきた.
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