連載 考える
ターミナルケアからの歩み—一看護婦の「物語」・10
表現することとターミナルケア
竹内 輝江
1
1大阪府立病院外科病棟
pp.964-968
発行日 2000年10月1日
Published Date 2000/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661903576
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語彙と表現力の足りない自分に気づく
ニューヨークのキャルバリー病院でスタッフサポートを担当していたカウンセラーが勧めてくれた『Grief, Dying, and Death』という本は,ターミナルケアを専門とするスタッフのために書かれたというだけあって,読み終えるまでにはかなりの時間と労力が必要でした.この本を読むまで,私はスタッフサポートをもっと気楽に考えていたのですが,「ここまでの水準に至らなければスタッフのサポートなんかできないのだ」ということを改めて思い知らされることになりました.
なかでも強く印象に残ったのは,自己の死生観を分析する手法についてと,死を巡る医療者の葛藤を分析する手法についてでした.普通,ターミナルケアの本というのは,死を前にした患者の心理や,具体的なケアの方法,家族の問題などを取り上げ,スタッフ自身の問題にまで言及していませんでした.そういう意味で,この本は間違いなく,死にかかわる医療者の拠り所になると思われました.
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