特集 精神症状に強くなる
“困った患者”のレッテルを捨てよう—クライエントの抱える課題とナースに求められる理解・対応
五十嵐 透子
1
1金沢大学医学部保健学科
pp.705-711
発行日 2000年8月1日
Published Date 2000/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661903522
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“良い”患者,“問題のある”患者
ナースにとって“よい”クライエントとは“扱いやすい”クライエントであり,指示に従ってくれる人たちである.つまり,“入院患者役割行動(hospitalized client role)”をとってくれている人といえる.今までの生活とはまったく異なった環境で,起床・就寝時間を守り,規則正しい時間に1日3回の食事をして,自分の話したい時間ではなく,ナースがベッドサイドに来て話してくれるまで待って,質問することにだけ答えてくれるような人たちである.ナース自身が入院経験をすることがあれば,いつもと逆の立場になり“よいクライエント”でいようと努めやすいことに気づかされる.「今は申し送り中だから,何か頼んじゃいけない」とか「ナースなのに!なんて悪く思われたくないから,気をつけていなくちゃ」と意識して行動をとるのではないだろうか.
“よい”クライエントは,“非人間的役割(non—person role)”を担いがちである.Lorber1)の研究によると,入院中のクライエントの75%は健康障害の回復過程において,指示や入院生活の規則を守る“よい”クライエントと分類され,残り25%は“問題のある”クライエントとレッテルを貼られるという.
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