特集 結核はナースが防ぐ
最近の結核と医療対応の基礎知識
永井 英明
1
1国立療養所東京病院呼吸器科
pp.110-114
発行日 2000年2月1日
Published Date 2000/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661903395
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はじめに
WHOによれば,現在,世界の総人口の3分の1(17億人)が結核に感染しているといわれ,1年間に新たに結核に罹患する人の数は,全世界で約800万人にのぼると推定されている.毎年,全世界で約300万の人々が結核で死亡しており,結核は今なお単一疾患としては死亡原因のトップである.全結核患者の95%以上および結核死の98%以上が開発途上国で発生している.とくに,それらの国々おいてはHIV感染症に合併した結核が問題となっている.基本的には結核は,開発途上国に多く,経済的に貧しい国に多いといえるが,日本は先進国の中では結核の罹患率の高い国である.
日本の結核の罹患率は年間10〜11%の率で順調に減少してきたが,1977年頃より減少率が縮小し,1997年の結核罹患率は人口10万対33.9と43年ぶりに増加に転じた(表1).1998年はさらに34.8と増加している.諸外国の結核の罹患率をみると(表2),ドイツ13.6,フランス11.5,英国10.1,米国6.4,オーストラリア5.5であり,日本の結核罹患率は先進国の中では最下位グループに属する.最近の結核患者の増加は高齢者の患者の増加による.高齢結核患者の大部分は結核の既感染者であり,高齢となり免疫能が低下し内因性の再燃を起こしてくるものと思われる.
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