特集 病院における患者の性の問題と看護の関わり
看護婦に望む基本的対応
武田 宜子
1
1国立身体障害者リハビリテーションセンター病院
pp.1106-1110
発行日 1992年12月1日
Published Date 1992/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661900759
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はじめに
人の性はライフサイクルの初期から重大な意味を持つ.人の性に対する考え方は,近年単に,男女の性別や性行為遂行能力(potency)および妊孕能力(fertility)だけを指すセックスだけではなく,女あるいは男であることのアイデンティティや役割機能に基づく人間関係を含むセクシュアリティ1)にも範囲が拡大してきている.
病気や残された障害は,人の性全般に影響する.残念ながら,まだ日本の医療には患者の性に対する援助者として十分な教育を受けた資格者は備わっていない.したがって,今まだ病院での患者の性は,特定の医師や看護婦の患者の性に対するセンスに委ねられている.ところが,人の性,とりわけセックスの欲求や行為は隠されたところにあり,公けにされると羞恥心や罪悪感といった強い感情を伴うものであるため,多くの看護婦は患者の性に対して奥ゆかしく閉ざされた環境を作り上げている.患者もまた,自分の性的な問題を気安く相談するようなことはしないし,他者から問われると抵抗を感じるであろうし,そうでないとしても看護婦が相談に応じてくれるとはよもや思わない.
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