連載 症状の起こるメカニズム[観察のポイント]・21
吐血・下血
橋本 信也
1
1東京慈恵会医科大学第3内科
pp.836-839
発行日 1990年9月1日
Published Date 1990/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661900201
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病態生理
吐血・下血はいずれも消化管からの出血です.消化管からの出血は,十二指腸空腸曲(トライツ靱帯)より口側の食道,胃,十二指腸からの出血,すなわち上部消化管出血と,トライツ靱帯より肛門側の小腸,大腸からの出血,すなわち下部消化管出血に分けられます.
吐血(hematemesis)は通常,嘔気とともに血液を嘔吐することで,出血部位は上部消化管にあります.血液中のヘモグロビンが胃液の作用により,塩酸ヘマチンに変化するため,吐物は褐色調として認められます.この色調は,出血した血液の胃内停滞時間によって異なり,胃内停滞時間が長い程,赤褐色調から褐色調となります.したがって出血直後あるいは大量出血後の吐血は鮮紅色ですが,胃内に出血して嘔吐までの時間が長い時は,いわゆるコーヒー残渣様となります.
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