連載 思い出すけっち[あの人、あの時、あの言葉]・20
患者さんに励まされて
山下 かしゑ
1
1国立療養所村山病院看護部
pp.750-751
発行日 1990年8月1日
Published Date 1990/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661900183
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戦災で一度倒壊した病棟が,ようやく復興したのは1949年秋であった.私は新しく開設される女子病棟の看護責任者に任命された.11月のある寒い日,第1号の新入院患者を迎えることとなった.Kさんは民生委員に付き添われ,迎えの看護婦とともにゆっくりと階段を昇って来た.
責任者として初めての病歴調査に,私は少し気負っていた.Kさんは顔色が悪く,やせ細って長身であるため一層重症に見えた.発病6年を経過した肺結核と腸結核で,毎日中等度の発熱があり,下痢もしている.歩行は禁止.入院のその日から個室でのベッド上生活となった.
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