特集 精神保健法施行2年を迎えて
精神保健法の光と影—患者が見つめた看護者群像
佐々木 信雄
1
1陽和病院・陽和患者会
pp.683-688
発行日 1990年7月1日
Published Date 1990/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661900168
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クリミア半島の戦場に一群の女性が馳せ参じてから136年.フローレンス・ナイチンゲールは戦火の暗黒の中から生まれ,看護者近代史の幕を開いた.以来今日にいたるまで,看護者は戦乱,貧困,飢餓など時代のさまざまな暗い影の中で生き続け,時には影に屈従し支えていくという役割を担うことすら強いられてきた.
しかし,病める者,傷つける者,刻々と迫る死の恐怖におののく者を看取るとき,彼女たち・彼たちの多くの胸中にあるものは,ただひたすらに患者の苦痛をやわらげ,いたわり,励まし,癒して家族のもとに帰らせてあげたいという一念であり,患者にとっては暗黒の世界に差し込む一条の光であったに違いない.病棟の鉄格子から漆黒の空を眺めて小半時,ようやく星の光が目にとまりはじめた.
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