特集 精神保健法施行2年を迎えて
精神衛生法から精神保健法へ—精神科医療・看護の歩みを概観する
櫻庭 繁
1
1千葉大学看護学部精神看護学講座
pp.660-667
発行日 1990年7月1日
Published Date 1990/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661900164
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はじめに
ここでは精神保健法の施行までの法的流れについて簡単に振り返ってみたい.これは明治時代にできた精神病者監護法(1900年),大正時代の精神病院法(1919年)まで遡ることができる.この2つの法律は,治療も今日のような向精神薬がなく,患者を保護収容し,そこで安静・安楽を図ることしかない中での法律であった.
しかし,多くの精神障害者は患者として医療を受ける機会もなく私宅監置という状況下で,家族からも離れ,納屋の隅で病気の世界に閉じこもっていた.入院生活ができるのは,家族が経済的に安定しているか,市町村長が監護すべき者,罪を犯し危険があると認める者,療養の道がない者,地方長官が認めた者に限られていた.
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