精神保健福祉法と病院の対応・1
精神保健福祉法改正と精神医療
仙波 恒雄
1,2,3
1同和会千葉病
2日本精神病院協会
3公衆衛生審議会精神保健部会
pp.276-279
発行日 1996年3月1日
Published Date 1996/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901754
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はじめに
世界的な規模で,社会保障制度,医療制度は変革の時を迎えている.日本でも同じく21世紀の高齢化社会にたえられる医療供給体制,医療費対策をめぐり,社会の構造的変化を踏まえて関連法制度の新設,改正が一斉に厚生省で行われ始めた.まさに法律改正ラッシュの感がある.精神科領域においても同様で関連法律の改正がいくつか近年行われた.なかでも最も関わりの深いのが精神保健法であるが,これが幾度かの改正を経て,今回平成7年7月その名も変わり『精神保健福祉法』となり登場した.
まず精神保健医療にかかわる法律について簡単に歴史的考察を加える.日本における精神保健医療に関する法律は,私宅監置を禁じた「精神病者監護法」が1900年(明治33年)に公布されたことに始まる.これが1919年(大正8年)公立病院設置を謳った「精神病院法」となり,ついで第2次大戦後の1950年(昭和25年)戦後の混乱のなかで,議員立法で「精神衛生法」の公布となった.この法律は社会防衛的な思想が強いものであった.関連法規としては,1960年(昭和35年)には精神薄弱者福祉法ができている.1964年(昭和39年)ライシャワー駐日米国大使が分裂病の一青年により刺傷されるという不幸な事件が発生し,警視庁から厚生省に対して法改正の意見具申があり,これを機に1965年(昭和40年)精神衛生法改正が行われた.
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