特集 いい運動,悪い運動
「疾患と運動」にまつわる不安に答えます
「腎疾患と運動」にまつわる不安に答えます
忽那 俊樹
1,2
,
増田 卓
3
Toshiki Kutsuna
1,2
,
Takashi Masuda
3
1北里大学大学院医療系研究科
2さがみ循環器クリニック
3北里大学大学院医療系研究科循環器内科学
pp.670-675
発行日 2008年8月1日
Published Date 2008/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661101301
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2002年に米国腎臓財団のKidney Disease Outcome Quality Initiative Guidelinesによって,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)という疾患概念が提唱されました1).CKDは,尿蛋白などの腎障害や糸球体濾過量の低下が3か月以上続いた状態を表し,「慢性に経過する腎疾患」の総称ととらえられています.そして,CKDは生活習慣病など将来腎障害を発症する可能性の高い状態から透析療法や腎移植などすでに末期腎不全になった状態までを含んでいます.これは現在,日常診療においてもっとも頻繁に遭遇する疾患の1つといえます.
CKDに対しては適切な食事療法や運動療法を実施していくことが重要と考えられていますが,食事療法に関しては具体的な指針が示されている2)一方で,運動療法に関しては具体的な指導指針が確立されておらず,「激しい運動は避けてください」といったようなあいまいな指示がなされる程度というのが現状です.
このため,たとえば運動により腎機能がさらに悪化することを心配するあまり,必要以上に身体活動を制限してしまい,結果として身体機能全体の低下を引き起こすといったことがあります.本項では,はじめに腎疾患に対する運動処方の原則を説明したうえで,日常診療の中で医療従事者が疑問に思うことや患者に質問されることが多い項目について具体的に解説します.
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