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英国のPFI第一号,ダートフォードNHSトラスト病院(以下,ダートフォード病院)に関して,11年目に入った現地定期調査を2008年8月末に行った.当初,今回の調査を計画した2008年3月時には,あまり成果が期待できない「つなぎの調査」の位置付けで,少しペースダウンを覚悟していた.理由としては,英国の不安定な政治情勢である.ブレア首相が退陣し,2007年6月に選挙で選ばれない形でブラウン政権が誕生したが,勝つ可能性があったにもかかわらず,その時点でブラウン首相は総選挙で信任を得る決断を回避した.その後,本政権の支持率が大幅に急落し,保守党キャメロン党首の人気が着実に高まっているため,総選挙実施を逸した.結果として2009年5月の任期切れ近くまで解散を行わない公算が高まり,労働党政権の「第三の道」を具現化するPFI/PPP(官民提携)政策も現状維持を保っているであろうと予想され,今回の調査成果の期待値も高くはなかった.
しかし,このような予断はいい方向に大きく違っていた.これまでの継続調査の枠組みに基づき,ロンドン厚生省の関係官僚,大手コンサル会社幹部,ダートフォード病院の経営幹部を含むPFI担当者と駐在の民間企業責任者,専門誌の編集長,当該病院の前経営トップ,国立大学の医学部教授,PFIの派生概念のLIFT(Local Improvement Finance Trust:地方改善財務信託)の民側経営幹部や英国最大NPOの経営トップ等に面談したが,ほとんどが10年以上の付き合いのある懇意の人たちであったため,意見交換は短時間にもかかわらず,本音で核心に迫ることができた.「PFI/PPPに関係する分野において,周辺部と上部組織,現場組織で集中的に情報を収集することで,断片的な情報が相互に結びつき全体像が明確に把握できる」と今回も実感した.その要旨は次の通りである.
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