巻頭カラー連載
アフリカが紡ぐ命の物語・10
井上 冬彦
1
1井上胃腸科・内科クリニック
pp.869
発行日 2007年10月1日
Published Date 2007/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661101094
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樹上のライオンが水牛を狙っているように見えるこの写真.だが,真相はまったく異なっていた.その時の様子を書いてみたい.
朝のサファリ,3頭のハイエナが狩りに成功し,獲物を食べているのを発見した.しばらく見ていると2頭の雌ライオンが横取りしようと近づいてきた.ハイエナたちは,獲物をくわえて逃げ始めたが,やがて2頭のライオンは1頭に狙いを絞って追いかけ始めた.不気味な声で吠えたてながら抵抗していたハイエナもとうとう獲物をあきらめて逃げだした.「ライオンたちがやっと肉にありつける」と思ったが,そう簡単にはいかなかった.この騒ぎを聞きつけて8頭のハイエナが集まってきたのだ.そして再び両者の小競り合いが始まった.そこに通りかかったのが30頭以上の水牛の群れ.はじめはじっと様子を見ていたが,いつまでもその場所で小競り合いを続けているライオンたちに業を煮やし,怒涛のように押し寄せてきた.こうなるとハイエナもライオンもひとたまりもない.逃げ遅れたライオンの1頭がさんざん追い回された揚句に樹上に逃げ込んだのがこの写真の真相だった.
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