特集 バイタルサインから読む! 薬のリスクマネジメント
転倒にかかわる薬
本橋 茂
1
1北里大学病院薬剤部
pp.770-775
発行日 2003年8月1日
Published Date 2003/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100969
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
入院患者の高齢化が進むなか,転倒が,骨折や心理的不安につながり,QOLの低下の要因となっている.また,転倒は,医療事故の原因として,薬剤関連(処方・調剤・与薬エラーなど)に次いで2番目に多いといわれており,海外の報告では1年間に少なくとも1回の転倒経験を有する70歳以上の高齢者は全体の30-40%(骨折は4-6%程度)も存在することが示されている1).薬剤が転倒の直接的あるいは間接的な原因になっていることも少なくない.したがって,薬のリスクマネジメントの観点から,転倒防止は重要な課題である.
転倒が発生する原因
転倒の原因は,環境の変化などに起因する外的原因と,疾患や患者の精神状態の変化や服用薬剤等に起因する内的原因に分けられる.入院時は,特に内的原因に注意する必要がある.表1にその内的原因を示す.
転倒が薬により引き起こされる場合は,年齢とともに低下する肝機能・腎機能を有する高齢者でのケースも多く,薬物体内消失の遅延に基づいて薬が体内に蓄積する可能性があり,各薬物の副作用も起こりやすくなる.本稿では,転倒を引き起こす薬剤に関して解説する.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.