エッセイ
末期癌の夫を看とって
中村 淳子
1
1高松市医師会看護専門学校
pp.377-379
発行日 2003年4月1日
Published Date 2003/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100955
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
トラベルビー著『人間対人間の看護』(医学書院, 1995)を読んで,「看護師は,病気や苦難の体験を予防したり,あるいはそれに立ち向かうように,そして必要な時には,いつでもそれらの体験の中に,意味を見つけだすように」という言葉に衝撃を受けた.
1992年に他界した夫の肝臓癌との戦いの中で,妻として看護師として,どれほどの援助ができただろうか.癌末期特有の痛みによる苦痛,不安,焦燥に対する援助は,けっして満足のいくものではなかったとの悔恨の念が心の奥底にくすぶり続けていた.何が不足していたのか,どうすればお互いに思い残すことのないようなかかわりができたのか.その疑問に答えてくれる言葉に出会えたと思った.
たとえ回復の見込みのない病人でも,家族にとってはその人の世話をすることが生きがいであり,また,一生懸命に生きている病人にかかわることによって学び得るものがあるはずだ.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.