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はじめに
「排泄ケア」と聞くと皆さんは何をイメージされるでしょうか.私が新人研修でこんな質問をすると,ほとんどの方が「オムツ交換」と答えられます.決して間違いではないのですが,何かすっきりしないものがあります.実はこのモヤモヤが10年来私を悩ませ,ここまで排泄にこだわる要因となってきました.
そのモヤモヤの正体とは「成熟していかない日本の排泄ケアの現状」です.福祉用具の相談員を始めとして,オムツメーカー(国産・外資系)のアドバイザーとして長年仕事をしてきましたが,いつも心のどこかに「どうして失禁=おむつなの? 排泄ケアがオムツ交換?」となかばいらだち,忿まんやる方ない状態で仕事をしていました.たしかに専門雑誌は数多く出版され,排泄ケアに関する幅広い知識が紹介されてはいます.しかし,現場の方の話を聞くと,オムツとの格闘の毎日なのです.このギャップを埋めるには,オムツの供給サイドからだけではなく,需要サイド,すなわち排泄ケアの実状を見ないで解決の突破口はつかめないと考え,現場に飛び込む決心をしました.
折しもオムツメーカーでの営業時代のご縁から,八千代病院で排泄ケア(教育を含む)に関する全般と,新人の研修とを受け持たせていただけることとなり,2001年9月よりコンチネンス脚註)プロジェクトを立ち上げました.私自身,もともと栄養士で,さらに臨床検査技師として,中央検査科で各部門を回っていた経緯もあり,病院勤務については何の抵抗もありませんでした.そこで学んだ基礎的な医学知識と,「一般検査室」での体験も生かしながら,もう一歩踏み込んだ部分で「排泄」を捉える,願ってもないチャンスを与えられたわけです.「モヤモヤ」解消の絶好の機会でした.ところが,現実は後段の通り紆余屈折の戦いとなってしまいました.
今回はこのプロジェクトと,オムツ使用を見直すための取り組みについて1年間を振り返り,ご紹介したいと思います.
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