招待席
生殖医療を「書く」ことは人間の多面性に迫ること―小説『神たちの誤算』を上梓して
渡辺 由佳里
1
1小説家/元看護婦・助産師
pp.97-101
発行日 2003年2月1日
Published Date 2003/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100920
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
―2冊目の単行本『神たちの誤算』の上梓,おめでとうございます.表紙もおしゃれで手にとった感触もいいですね.現代アメリカのさまざまな社会的事象が盛りこまれ,かつ読み応えのあるストーリーが展開されています.これだけの情報を,正確かつアップデートなものにするためには,準備するのも書くのも大変だったのではないでしょうか.
渡辺 書き始めてから脱稿までは2か月半ほどです.
―エーッ,そんな短期間で.すごい.
渡辺 ただし,そこまでの仕込みが大変でした.実は『神たち』を書く前に,日米の医療の違いにふれた長編を書いていました.そのときに勉強したことがベースとしてあったことと,私はもともと助産師でしたので,生殖医療については以前から興味をもっていました.医療制度や保険に関する情報は,李啓充先生や田中まゆみ先生の本1-3)から教わることが多くありました.法的な問題,政府発表資料などの多くはインターネットから得ました.生殖医療に関しても,治療法や値段などの多くの情報をインターネットから得ることができました.むしろ困ったのは日本側の情報です.政府関係の資料は集めにくいし,取材には苦労しました.あとは自分自身が患者として病院をたずねた経験とか,知り合いの医師,看護師からも話を聴きました.それらの取材期間が半年くらいです.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.