連載 看護のアートをめぐるカフェ・トーク・11
“医療における安全形成”という思想
谷津 裕子
1
1日本赤十字看護大学
pp.192-197
発行日 2007年2月1日
Published Date 2007/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100873
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“安全管理”の落とし穴
「1999年1月に横浜市立大学医学部附属病院で起きた患者取り違え事故,モトコさんは覚えてます?」
「覚えてるわよ.心臓と肺の手術をするはずだった患者さんを取り違えて執刀した,あの事故でしょ?」
「そうです.」
「ちょうど私たちが必死で研究計画書に取り組んでいた頃のことよね.ニュース番組で連日報道されてたっけ….」
「そうでしたね.事故の重大性もさることながら,私が関心をもったのは,事故に続いて病院側が示した反応でした.」
「病院側の反応?」
「ええ.新聞1で読んで知ったのですが,事故の後,病院ではさまざまな安全対策を打ち出したそうです.最初に作った事故防止マニュアルでは,何かにつけて“患者確認”が求められるようになって,たとえば患者さんは手術前に自分で足の裏に黒い油性ペンで名前を書くことになり,10m歩くたびに担当医や看護師に呼び止められたらしいです.」
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