招待席
高齢者虐待に向き合って―日本初の実態調査から学会設立まで
田中 莊司
1
1日本大学総合科学研究所
pp.945-949
発行日 2003年10月1日
Published Date 2003/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100802
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
―このたび高齢者虐待防止学会が設立され,先生はその会長に就任されました.ある意味では遅すぎるスタートともいえるのではないかと思いますが,日本では外国にくらべ虐待問題に気づくのが遅かったのでしょうか.
田中 はい,そのとおりです.一般に西欧社会では,1960年代に児童虐待,1970年代に女性配偶者虐待,1980年代に入って高齢者の虐待が社会問題化してきたといわれています.日本の場合もまったく同じ図式です.児童虐待については,戦前の1933(昭和8)年に児童虐待防止法が制定されました.それが戦後の児童福祉法に受け継がれ,児童虐待に関する条文が4つほど入りました.しかしそれでは不十分だということもあって,2000(平成12)年に児童虐待防止法ができました.女性に関する虐待についてはちょっと特殊で,海外の女性運動のなかで人権問題として盛りあがってきて,国連世界女性会議等で女性に対する暴力の根絶がうたわれ,それが日本の政策に反映されました.高齢者に関してはいちばん遅れていて,国内ではまだ法律の整備までには至っていません.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.