特集 これでは子どもが守れない!? 小児看護の“危機”とは何か
キャリーオーバーした患者の増加
小村 三千代
1
1国立看護大学校
pp.650-651
発行日 2003年7月1日
Published Date 2003/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100755
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キャリーオーバー(carry over)とは,小児医療の進歩とともに救命され,長期生存して成人期へ移行することである(矢田,2000)1).これらには,心奇形や直腸肛門奇形などの先天性疾患患者と血液・腫瘍疾患や糖尿病,慢性腎不全などの慢性疾患患者がいる.乳幼児期より治療を繰り返しながら成長発達し,思春期・青年期あるいは成人期を迎えた患者はどんな問題を抱え,どのような支援が必要なのか考えてみる.
キャリーオーバーした患者の動向
昨年,わが国の子どもの数は,総人口の14.3%と過去最低であった(厚生の指標,2002)2).しかしながら,先天性疾患や慢性疾患の子どもの死亡率は減少し,16歳以上の患者が増加している.気賀沢(1998)3)の調査によると,1970年から1999年までの小児白血病,悪性腫瘍の年次的死亡率は,急性骨髄性白血病,急性リンパ性白血病,悪性腫瘍において,それぞれ急激に減少していた(図1).その理由は,化学療法や骨髄移植を中心とした治療法の進歩によるものである.
一小児専門施設の調査であるが,小児期発症の神経疾患をもつ16歳以上の患者に関しては,1983年ころから増え始め,1993年に40名,1998年には150名になったと報告されている(図2)(二瓶ら,1998)3).
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