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近年,出生数が低下し,少子化が進んでいるにもかかわらず,新生児医療の進歩による救命率の上昇により,低出生体重児や先天性疾患児の出生は増加し,新生児集中治療室(Neonatal Intensive Care Unit ; 以下NICU)への入院も多い.NICUでは,これまでの救命重視の医療から,このような子どもたちを「育む」医療への移行が必要だといわれ,さまざまな取り組みがなされている.それらの取り組みは,子どもたちだけでなく,子どもを含む家族を育む医療としても必要とされている.しかしながら,NICUに入院する子どもとその家族を取り巻く環境は十分とはいえないのが現状である.
増える低出生体重児・足りないベッド
1970年代前半の第二次ベビーブーム時の200万人を超える出生数を頂点に,近年の出生数は低下している.2000年には,いわゆる「ミレニアムベイビー」効果もあり,さらなる低下は招かなかったものの,出生数119万人,合計特殊出生率も1.36と1),依然として少子化の進行は深刻な社会問題である.このような出生数減少にもかかわらず,低出生体重児(2500g未満)は,2000年には10.2万人と増加しており,その出生率は,1970-80年代の5%台から8.6%にまで上昇し,そのうち極低出生体重児(1500g未満)は7900人,0.7%に及んでいる1)(表1).
これらの子どもたちは疾患を持っていることも多く,また成熟児であっても重篤な先天性疾患を持つ子どもが増加していることを合わせると,出生直後からの治療やNICUへの入院が必要な新生児が増えており,さらに疾病構造の複雑化によって,長期入院化している現状である.しかしながら,2000年の保険認可NICUを有する施設数およびそのベッド数は,209施設1482床であり2),増床しているものの依然不足している.
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