連載
患者になった旧友との往復書簡―「前略 小生、透析を始めました。」・2
東 めぐみ
1
,
中村 厚
1駿河台日本大学病院看護部
pp.1028-1029
発行日 2006年11月1日
Published Date 2006/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100661
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中村厚様.お手紙拝読しました.落ち着いた筆致で書かれた文は,中村さんが自己を見つめて生活している静かさを伝えてくれました.それに比べ,私の生活はますます忙しくなり,先週もソウルでの国際学会へ参加,帰国後すぐに福岡に出張,留守の間に滞った仕事の整理などせわしない時間を過ごしています.ゆっくりあなたに手紙を書くのも,とても久しぶりですね.
早いもので「小生,透析を始めました……」と書かれたはがきが舞い込んできてから2年過ぎてしまったのですね.でも,あのはがきを受け取った衝撃を今でも覚えています.まずは「透析を始めた」とはどういうことなのだろうという疑問から始まり,「どうして中村さんが透析なの……?」と,しばらくははがきの内容が理解できずにいました.仕事帰りにポストを覗き込み,中村さんからのはがきだと思いつつ玄関までの短い距離を歩きながら読んだことを記憶しています.そして,リビングのグリーンのソファにどっと腰を下ろし,はがきの内容が徐々に現実的なものとして夕暮れとともに私に重くのしかかってきたのでした.そして「中村さんはふくよかだったから糖尿病だったのかしら」との推測が働き,「何でこんなになるまで黙っていたの.」と怒りが湧き起こったことを覚えています.人は衝撃が大きいと悲しみよりも怒りが湧くのですね.そんな私の混乱とは無関係にはがきの内容はおどけていて,そうしてしか書けない事実を私に伝えてきたんだ,としばらくして理解することができました.
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