連載
患者になった旧友との往復書簡―「前略 小生、透析を始めました。」・5
中村 厚
,
東 めぐみ
pp.164-165
発行日 2007年2月1日
Published Date 2007/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100868
- 有料閲覧
- 文献概要
朝晩すっかり凌ぎやすくなりました.日に日に初秋の気配が濃くなっていきます.夏から秋へ.季節の移り変わりに敏感になりました.
先日の東さんからの手紙には,いくつかの問いかけがありました.医療者として緊張感ある場にいることが切々として伝わってきます.
前回の手紙に,糖尿病性腎症から慢性腎不全になった自分のことを「生活習慣病の蓄積の見本」と書きました.それは,糖尿病治療のために通院していた頃,医師から大変なことになると,幾度も注意されていたにもかかわらず,そんなことはないはず,と自分勝手に受け流していたからです.仕事の重圧もあってストレスがたまっていましたが,教育入院もままならない状態でした.印刷・広告という仕事は面白かったし,充実感もありました.それでも押し切って教育入院をすれば,いくらかでも事態の深刻さが飲みこめたのかもしれません.別の言い方をすれば,自分を大切にしていなかったのですね.捨て鉢な気持ちにもなっていました.だから,救急車で搬送された時には,ある意味ではホッとできたものです.糖尿病であったということ,人工透析を受けざるを得ない状態にまで悪化していること.こうした事実を受け入れるには,救急車で搬送されたことが一番よかったと思いました.これで隠すことなく生きていけるというような,解放感さえ抱いたものです.
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.