連載 DV被害者に看護師ができること・5
日常ケアの中で被害に気付く
友田 尋子
1
1大阪市立大学医学部看護学科
pp.938-942
発行日 2004年9月1日
Published Date 2004/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100534
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一足飛びに「具体的な援助を」ではなく概念を学ぶ重要性
「DVの概念を理解することの重要性はわかる.しかし,臨床現場では,目の前のDV被害者へ今すぐ対応しなければならないのだ」.読者の中には,このような思いを抱く方もおられるだろう.しかし,DV問題へのかかわり方は,まさに“急がば回れ”なのである.DVの問題は,小手先の技術で解決できるほど容易なものでもなく,援助者の無理解こそが問題を悪化させる危険性を高めてしまうのである.
たとえば,DVの被害者にかかわるとき,被害者自身が決意して歩みだすのを「待つ」ことが,重要なポイントになってくる.それも数分単位ではなく,ケースによっては数年単位のお付き合いになるかもしれない.「待つ」ことができるためには,DVが被害者に与える影響を学ぶだけでなく,それを理解することが重要なのである.援助者が無理解であれば,「なぜ逃げないのか」とか,「暴力を受ける側にも問題がある」などと思い始め,そのような非難をうっかり口にしてしまうかもしれない.理解に基づかないかかわり方は,親切の押し売りでしかない.信頼関係のない患者-援助者間は,簡単に縫い目がほつれて,援助者側の「ぼろ」が出てくるのである.
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