連載 In the assisted living シアトル・高齢者ケア事情・9
ドロボー!なんて怒鳴らないで……―痴呆症入居者の異常行動の管理
北野 敬子
1
1アシステッド・リビング
pp.934-937
発行日 2004年9月1日
Published Date 2004/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100532
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私はドロボーじゃありません !
「もう,ほんとにいや」.そう言いながら,入居者アシスタント(Resident Assistant;以下,RA)のリネーがソーシャルワーカーのキャレンのオフィスへやってきた.そのすぐあとから,入居者のミッシェルさん(78歳,女性)が「ドロボー! この女が取ったのよ!」と叫びながらついて来た.2人がオフィスへ入ってから,私にも話を聞いて欲しいと,キャレンから電話が入った.
ミッシェルさんは,2か月前に老年専門精神病棟からこの施設へ移ってきた.彼女は痴呆症のほかにもいくつかの精神病を持っていた.老年専門精神病棟でも,しばらくの間,抗精神病薬で彼女の精神症状をうまく管理できず,被害妄想的な訴えをしていたそうだ.だが,「大丈夫かしら?」という私たちの懸念に反し,ミッシェルさんは問題となる行動もみせず,新しい環境へうまくなじんでいった.それについ先日,「この施設が私の新しい家ね.よろしくお願いします」と私に言い,運んできた荷物をうれしそうに整理していたのに…….
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