- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
今まで心電図の教科書には,右脚ブロックは一般に先天的なものが多く予後は良いが,左脚ブロックの予後は悪いと記述されています.また,脚ブロックを示す症例の基礎疾患に左右差が見られるかどうかについて,長期にわたって研究された文献はありません.
現在,大学病院や大病院などでは,長期にわたり1人の担当医がすべての患者を経時的に診察することはきわめてまれです.今回,われわれはこの点に注目し,心電図上,左・右脚ブロックと診断された症例で,1998年1月6日より2003年5月10日までの約5年間に,当クリニック循環器外来(成人循環器疾患)において記録された心電図4997枚をもとに追跡調査を行ないました.
その結果,この間の患者総数は1156名(男:528名,女:628名)に上りますが,左・右脚ブロックと診断されたものはあわせて85名であり全体の7.35%でした.また,この85名のうち,左脚ブロックと診断されたものは16名で全体の1.38%,右脚ブロックと診断されたものは69名で全体の5.97%であり,左脚ブロックの約4倍であることがわかりました.
さらに左脚ブロックを3つのグループ,右脚ブロックを5つのグループにわけ,それぞれのグループにおける年齢分布,臨床的な基礎疾患を調べた結果,左脚ブロックと右脚ブロックの間には,基礎疾患に差のあることが明らかになりました.
また,今回の追跡調査で完全右脚ブロックを示す症例中に,胸部誘導のV1―V3に特異なST部分の上昇を示す2症例のあることがわかり,最近,突然死の原因として注目を集めているブルガダ症候群(Brugada Syndrome)と判定されました.
ベッドサイドで心電図を記録し,完全右脚ブロックとブルガダ症候群を鑑別することは,医師はもちろん看護師にとってもきわめて重要なことです.そこで本稿では,心電図上のチェックポイントや,バイタルサインとの関係,看護上注意すべき点について述べることにします.
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.