特集 死産・流産のケア
児を亡くした家族はどのようなケアを望んでいるか
北村 俊則
1
,
蓮井 千恵子
2
1熊本大学医学部神経精神医学
2熊本大学医学部神経精神医学講座
pp.709-713
発行日 2002年9月25日
Published Date 2002/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611903489
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医療・看護教育と悲哀反応への対応
医療・看護の専門職を目指す者は,病に苦しむ人々の苦痛を緩和し,そうした入々の健康の回復を願い,そのことで人々の幸福に貢献できるという幻想を抱いて卒前教育を受ける。あたかもすべての疾患はわれわれの努力しだいで克服できるかのように教えられ,それを信じて研鑽を積む。しかし,実際の医療・看護の現場に出たとき,苦痛を緩和し回復に導けるケースは思ったほどは多くないこと,障害が残ったり,死にいたってしまうケースがあることを体で感じることになる。そして,それまで学習した医学知識・看護知識は,そうした事例にどのように対応すればよいかとか,さらにはそうした人々やその人々を愛する人々がどう感じたかといったことを理解するのに,ほとんど何の役にも立たないと知るのである。
愛するものとの死別(bereavement)の後に起こるさまざまな心理状態や行動を悲哀(grief)と呼ぶ。悲哀は時間経過とともに変化し,喪失体験からの回復過程としての喪(moaning)の作業を形成する。流産・死産・新生児死亡といった周産期死亡はこうした悲哀を強く呈する可能性のある出来事である。しかし,残された母と父,そして周囲の人々への看護的介入は重要であるにもかかわらず,体系的に検討されてこなかった。また,これまでの研究や臨床検討の多くは,残された者を外部から客観的に観察評価する手法を取っていた。
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