特集 必修.周産期の心のケア
妊婦の不安のケア
高室 典子
1
1出産・母乳・育児相談室エ・ク・ボ
pp.1038-1042
発行日 1998年12月25日
Published Date 1998/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611903473
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はじめに
女性であるがゆえに体験できる妊娠・出産・育児。この3つの一連の過程は,女性が娘から妻へ,妻から母へと大きな変化のステップを短期間のうちに昇っていくことでもある。そのプロセスは短くかつ劇的であるがゆえに,妊婦にかかわるすべての人はそこに加わる不安やストレスの大きいことを,忘れてはならない。妊婦は体の中に,自分とは別の生命を宿し,約280日という時間をかけて守り抜いていく。その行為は,女性だけに与えられた誇り高き使命であり,時には,自分の命までもかけて全うするのである。しかしさまざまな不安やストレスにも直面する。
現代の日本の社会は,高度成長で築いてきた物質社会が揺らぎ,大企業までもが倒産したり,どこを向いてもいいことがないように思え,多くの人たちが不安やストレスで疲れている。新聞やニュースで目にする事件は,胸の痛むものや,かつての常識を越えるものも多くあり,まるで,社会全体が心の病になってしまったように映る。実際,精神科や心療内科,神経内科にかかわる病が急増し,しかも低年齢化してきている。
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