特集 必修.周産期の心のケア
心のケアができるために自分自身を知る
木村 とも子
1
1八戸市立市民病院
pp.1033-1037
発行日 1998年12月25日
Published Date 1998/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611903472
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はじめに
私たち人間は,思い出したくない想い出は心にしまって,蓋をすることができる。そして,それが特に思い出したくないことであればあるほど,奥へ奥へとしまっておきたくなる。おそらく一人一人がきっと,蓋をしている想いを抱えているはずだ。蓋のなかには,苦しかった,恐怖に脅えていた,悲しかった,悔しかった,楽しかった,いろいろな気持ちがつまっている。生まれてから今までのさまざまなことが。
人間は誕生前後,新生児期,乳児期,幼児期はまだ無力な存在だ。だから,この期間,密接にケアする医療者,助産婦はその人々──母と子に絶大な影響力がある。助産婦はただ安全に生ませればいいというものではない。精神的な傷を母と子に与えてはならないはずだ。しかし,助産婦自身が心の内に傷を持っていれば,相手に傷を負わせてしまうことがある。だから助産婦は,まず自分を知ることが大切なのだ。
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