特集 出生前診断の倫理的問題を問う
出生前診断の最新知見と新たな問題
西野 共子
1
1旭川医科大学産婦人科
pp.357-364
発行日 1995年5月25日
Published Date 1995/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611903369
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はじめに
最近,出生前診断は身近な話題になりつつある。従来のわが国には,日常的に遺伝や胎児奇形について語るのがはばかられる傾向があり,出生前診断は一般の話題になりにくかったのであるが,近頃は,遺伝子診断で血友病や筋ジストロフィーの出生前診断ができることや,妊婦の血液採取でダウン症などの染色体異常の検査ができるというようなこと,さらには,欧米での体外受精を応用した遺伝病の着床前診断の話までが,一般の人々に向けてマスコミで報道されるようになった。
ところがこれに対して,産科の最前線にいる医療従事者には,かえって出生前診断の実像が見えてこないという現状がある。遺伝子診断の対象となる疾患の多くが稀な疾患であるために,日常診療で遭遇する機会が少ないことや,先端的な診断技術を持って診療を行なっている施設が限られることなどが,出生前診断の全体像をわかり難くしていると考えられる。
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