研究・調査・報告
抗てんかん剤内服褥婦の母乳管理
市原 里美
1,2
1香川医科大学附属病院産婦人科病棟
2現・香川県立中央病院手術室
pp.789-792
発行日 1990年9月25日
Published Date 1990/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611903247
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はじめに
母乳保育は,母児間のヒューマンボンディング確立に極めて重要であることが再認識されつつあり,私たちも母乳保育での育児を啓蒙し,母親もそれに対し積極的に対応しようとしている。しかし,合併症があって,妊娠産褥を通じて薬剤を服用しなければならない母親では,時に児への影響を考慮して母乳保育を断念しなければならない場合もある。一方,現在では臨床薬理学の立場より薬物代謝動態・臓器移行性等の分析が長足の進歩をとげつつあって,母乳を介する児への薬物の影響を最小とする適切な計画に沿って授乳させれば,児に対する危険性を回避できることが,多くの薬物について次第に明らかになってきている。
今回,抗てんかん剤内服中の褥婦に対し,母体および新生児血中と母乳中の薬物濃度を経時的に測定することによって,母乳保育が可能となった2症例を経験した。今後,抗てんかん剤内服中の母乳保育をすすめる上で,示唆の多い貴重な知見を得た。さらに看護面でも,てんかん患者が抱えている対社会的な問題も浮き彫りにされ,本疾患の特殊性を痛感した。合わせ報告したい。
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