特集 「三歳児神話」の検証
母乳育児と女性のエンパワメント
高橋 万由美
1
1宇都宮大学教育学部地域社会教育コース
pp.774-778
発行日 2001年9月25日
Published Date 2001/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902722
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最近,育児が負担だという母親が増えてきたと言われる。その原因のひとつとして「3歳までは母親が子どものそばにいて育児に専念すべきだ」とする「三歳児神話」が根強く,それが女性に対する過度の期待と賛美となって母親を苦しめていることが挙げられることが多い。しかしもちろん,育児負担感が増している原因はそれだけではなく,例えば育児に関する適切な情報提供と支援の不足も原因のひとつとして挙げられるだろう。
母乳育児についても,母子双方にとっての母乳育児の利点,授乳のための基本的な知識,支援グループなどについての情報提供の仕組みが不十分で,母親を支援するための技術や技能を持った医療・保健専門職が非常に少ないために,必要な情報や支援が受けられない中で,母乳育児を負担に思ったり,続けられなかったりする母親が少なくない。母乳育児をしたいと思う女性に対して,必要な情報や支援が受けられるようにすることは,母親の育児負担感を軽減するひとつの有力な方法になるだろう。しかし,母乳育児が3歳までの育児の大きな部分を占めるために,母乳育児を支援することは,「三歳児神話」を補強し,結局女性の選択肢を狭めることになると批判されることも少なくない。
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