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母乳育児運動とWABA
母乳育児の文化を復活させるための闘いのきっかけは,1939年にセシリー・ウイリアム博士がシンガポールで行なったスピーチ「ミルクと殺人」の中で人工乳の販売促進に警鐘を鳴らしたことにさかのぼりますが,国際的に1つの勢力といえるまでに母乳育児運動が成長したのは,1970年代に入ってからのことです。1980年代の終わりには,いくつかの卓越した国際的な組織とネットワークが世界規模の母乳育児運動を担うようになってきていました。それぞれが特定の領域に特化し,独立して活動をしていた状況でした。
1990年代は再び母乳育児文化を復活させようという人々の運動が復興しました。その結実の1つが世界母乳育児行動連盟(The World Alliance for Breastfeeding Action:WABA)の誕生でした。1991年2月14日のバレンタインの日に,UNICEF本部(N.Y)の地下で,母乳育児の推進のために活動するさまざまなグループや個人が集まりました。その中には,直接に,または間接に,母乳育児運動にかかわっているような組織,たとえば国際消費者連盟,世界教会協議会,乳児用食品国際行動ネットワーク(International Baby Food Action Network:IBFAN),ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル(La Leche League International:LLLI),国際認定ラクテーション・コンサルタント,栄養学の専門家などが含まれていました。1990年に32か国の政府と10の国連機関によって採択された,「母乳育児の保護・推進・支援に関するイノチェンティ宣言」*1の目標を実現するための活動を国際的にコーディネートする組織が必要と考えた参加者の圧倒的な支持によって,WABAが設立されたのです。
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