連載 判例にみるジェンダー・8
「嫌がらせ電話」によるPTSDと傷害罪
石井 トク
1
1岩手県立大学看護学部
pp.734-735
発行日 2001年8月25日
Published Date 2001/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902710
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PTSDと「嫌からせ電話」
精神的な外傷体験が精神と身体に多様な反応を引き起こすことは,ベトナム戦争から帰還した兵士の多彩な症状を契機に研究が進められ,1980年代に心的外傷後ストレス障害(PostTraumatic Stress Disorder:PTSD)として,精神疾患の一つの診断名となった。わが国では,阪神大震災によって人々の知るところとなり,自然災害時発生におけるPTSDに対する措置が不可欠になった。また,性暴力被害者,セクシャル・ハラスメント被害者のPTSDにも急速に関心が持たれてきた。昨今では,大阪教育大附属池田小学校の児童ら23人の殺傷事件がある。事件に巻き込まれた被害者学童は言うまでもなく,目撃した学童,同小学校在学中の学童,また,テレビの放映から影響を受けた学童もいる。PTSDは臨床の問題だけではなく,法的問題と無関係ではなくなった。
本稿では被告女性が現在交際中の男性と以前付き合っていた女性(被害者)に対して,約4年間継続して脅迫,無言電話をかけ,被害者をPTSDに陥らせたとして,傷害罪を認め,平成13年4月19日懲役2年,執行猶予4年の刑が言い渡された判例を紹介する。
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