今月のニュース診断
日本における「代理母」の実施
加藤 秀一
1
1明治学院大学社会学部 社会学・性現象論
pp.560-561
発行日 2001年7月25日
Published Date 2001/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902678
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国内初の「代理母」出産
2001年5月19日付「朝日」朝刊の一面に,日本国内で初めて体外受精を用いた代理母による出産が確認されたことを告げる,大きな見出しが掲げられた。不妊夫婦の卵子と精子を体外受精して,出来た胚を代理母の子宮に移植するホストマザー(借り腹)方式による出産である。AIDや体外受精の時と同様に,今回もまた,ルール作りに先だって実態が先行するという,わが国における生殖補助医療展開のパターンがくり返されたことになる。
続報によって,日本では法的に禁止される方向で手続きが進められているこの処置を独走で行なった医師が,かつて独断で卵子提供による出産を補助したことで日本産科婦人科学会を除名処分にされた(1998年)根津八紘医師であることがわかった。公的なルールに反してでも「患者のため」に行動する覚悟をつねに強調するこの人の,事柄への配慮のなさ(事後的ケアの無視など)はこれまでにも指摘されているが,ここでは個別事例の問題に拘泥するのではなく,「代理母」の現在と今後について,広い視野で見直してみたい。
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