シネマ解題 映画は楽しい考える糧[11]
「代理人」
浅井 篤
1
1熊本大学大学院医学薬学研究部生命倫理学
pp.439
発行日 2008年5月15日
Published Date 2008/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101425
- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
母親の資格とは何か?
原題は「イザヤを失うこと」,副題は「What makes a mother?」.イザヤというアフリカ系アメリカ人の幼児をめぐり,生みの親と白人の育ての親が親権を争うという物語です.カイラは貧乏で麻薬中毒のアフリカ系アメリカ人女性.無職で,麻薬を買う金は売春をして稼いでいました.ある日,麻薬欲しさに生まれたばかりのイザヤをちょっとだけのつもりでゴミ置き場に置き去りにします.しかし麻薬のせいで目覚めたのは翌朝,イザヤはゴミ回収作業員に発見され救急外来に運び込まれたあとでした.この時イザヤはゴミ収集車の中で危うく潰されそうになりました.その後カイラは万引きで服役することとなり,出所後は麻薬を断ち,読み書きも習い,人生を建て直しました.彼女はイザヤを死なせてしまったと思っていました.イザヤの父親は誰かわかりません.
イザヤはゴミ収集車の中で死にかけますが,救命救急センターの集中治療で回復し,ソーシャル・ワーカーで彼の看護を担当していたマーガレットという白人女性の養子になります.養子縁組は正規の手順に則り手を尽くして行われていましたが,当時はカイラがみつからず彼女の同意がないままに手続きが進められました.マーガレットは夫と娘の3人暮らし.イザヤは経済的にも心理的にも安定した家庭に迎えられ,深い愛情を受けすくすくと成長しました.しかしカイラが妊娠中に麻薬中毒だったため,その悪影響が彼にも及んでおり,時に興奮したり暴れたりします.
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.