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21世紀に持ち越された未熟児医療の問題;脳室周囲白質軟化症(Periventricular leukomalacia:PVL)
1.なぜPVLが重要になってきたか
PVL(脳室周囲白質軟化症)はすでに1960年当初から未熟児に見られる病理学的所見として知られていたが,20世紀末になって,一度低下した脳性麻痺(以下,CP)の発生頻度が増加した最も大きな原因であることが知られるようになった。すなわち1970年代まで,新生児医療の進歩に伴って低下してきたCP発生頻度が,NICUが普及するのと時を同じくして再び増加したのである1)(図1)。その増加は,低出生体重児,特に極低出生体重児が治療の対象となってきた時期と一致しており,さらに増加したCPの大半がPVLによるものであることが明らかにされてきた。もちろんNICUの普及は,今まで救命できなかった未熟児を救い,これまで死亡していた児を救命して世に送り出すという,未熟児医療全体としては,多大な功績をしていることを忘れてはいけない2)。しかし,その一方で,われわれが救命のために良かれと行なっている高頻度人工換気や人工サーファクタントなどの新しい治療の中に,PVLの発生頻度を高めているものがあるかも知れないという謙虚な反省も,当然なされなければならない。
PVLの発生頻度に関しては,超音波による診断とMRIやCTによる診断で多少の差があり,33週未満のNICU入院例においては,その発生頻度は超音波では約5%,MRI/CTでは8〜9%となっている。すなわちPVLの約1/3はMRIやCTによって,初めて診断がなされている3)。また,PVLの発生頻度は,より未熟な児よりも27〜28週の児に高く,超出生体重児よりも1,000〜1,250gのグループに多い4)。その理由としては,PVLがある発育の段階でより発症しやすい時期がある可能性や,27〜28週という成育限界より少し週数が進んだグループにおいては,より積極的な救命の努力をするために,もっと未熟なグループとは違った出生前後の管理体制がとられていることなどが考えられるが,未だその理由は不明である。
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