特集 21世紀のいのち
助産婦と科学—気がかりな同盟関係
ジョイス・E・トンプソン
1
,
戸田 律子
2
Joyce E Thompson
1
1ICM (国際助産婦連盟)運営委員会
2日本出産教育協会
pp.9-14
発行日 2001年1月25日
Published Date 2001/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902559
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- サイト内被引用
はじめに──女性とともに
いよいよ,21世紀の幕開けです。ここで一歩立ち止まって,科学技術のめざましい躍進と生命について考え,助産婦の役割を見直すことは重要なことだと思います。なぜなら,高度先端科学技術は,生命の創造という人の存在そのものにかかわる分野に進出しているからです。体外受精,代理母,最新の避妊用具や薬剤,遺伝子相談,羊水検査や絨毛検査,パーキンソン病の胎児細胞による治療など,どれをとってみても生殖期に検討や判断をしなければなりません。しかも,男性よりもはるかに女性への影響力が強いのです。大半が女性である助産婦は,女性として生まれた人々の価値観を映しだす鏡であるからこそ,もう一度,その役割を振り返ることが必要不可欠なのです。
妊娠・出産・産後と妊娠前を含めて,最新の科学技術を使うべきかどうか。山積みの難題を選り分けて整理しながら,子どもを産み育てることについて,女性とともに女性とパートナーの選択や判断を支えていく大切な役割が,助産婦にはあります。まだ色濃く残る,女性への父権的な対応を変えることも,助産婦の極めて重要な役割です。女性があたかも人間的に下位にある状況は,女性の健康ばかりでなく,助産婦の職業的な健康をも脅かします。
Copyright © 2001, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.