特集 母性・父性から「育児性」へ
母子癒着社会における夫婦関係と父性
小浜 逸郎
pp.759-764
発行日 2000年9月25日
Published Date 2000/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902480
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幼児期の母子密着は悪くない
今の日本は母子癒着社会であるという批判が全面的に当てはまるのかどうか,一概に断定できない。母子癒着というと,子どもがいくつになっても母親から自立することができないために,不登校,ひきこもり,家庭内暴力,マザコン男性の甘えと依存など,さまざまな弊害を引き起こすというネガティヴなイメージばかりが付きまとう。問題の根は母子癒着にこそあるから,その根を断つべく早くから子どもを親から引き離すのがいいということになり,そのためには,母親が子どもを保育所にあずけて社会に出て働くのがいいといった短絡的な結論に導かれかねない。しかし,ことはそう単純ではない。
確かに日本の社会は,幼い頃の密着的な母子関係をそのまま引きずる傾向が強く,子どもの心理的発達過程に,それとは異質の要素を持ち込むことが苦手である。社会的人格形成に必要な免疫がなかなか形成されないのだ。しかしそのことは,ただちに,幼い頃の母子密着がいけないということを意味しない。母子密着にはよい面もある。
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