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背景:私たちは分娩監視装置を使って胎児の心拍波形を,日常的にモニタリングする。分娩中の胎児が低酸素症によって脳に損傷をきたす可能性があり,それを発見するのが,その使用目的の1つである。しかし,分娩監視装置で認められる特定の異常が,脳性麻痺のリスクと関連性があるかどうかは,まだ知られていない。
方法:カリフォルニア州の4つの郡にまたがり,1983〜85年に生まれた子ども155,636人から,単胎,出生体重が2500g以上で,3歳まで生存した中〜重度の脳性麻痺の子どもを抽出して調査が行なわれた。このような脳性麻痺の子どもたちと,ランダムに振り付けた対照群の子どもたちの分娩記録が比較された。
結果:脳性麻痺の子どもたち95人のうち78人,対照群の378人の子どもたちのうち300人が,分娩監視装置をつけて生まれてきていた。脳性麻痺のリスクを高める特徴として,遅発一過性徐脈(子宮収縮が開始したあとに胎児心拍に徐脈がみられる)が頻発すること(オッズ比3.9;95%信頼区間,1.7から9.3)と,基線細変動の減少(オッズ比2.7;95%信頼区間,1.1〜5.8)が関係するとみられる。一人ひとりの胎児心拍数の最高値と最低値と脳性麻痺のリスクとの関連性は認められなかった。他の危険因子の調整をしたあとも,脳性麻痺のリスクの上昇と分娩監視装置の異常波形との関連性には変わりがなかった(修正後のオッズ比2.7;95%信頼区間1.4〜5.4)。遅発一過性徐脈や基線細変動の減少があり,脳性麻痺だった子どもは21人いたが,それはモニタリングをした単胎,2500g以上の子どもたちの0.19%に相当した。偽陽性率が99.8%だということである。
結論:分娩監視装置でモニタリングをすることによって示される特定の異常は,脳性麻痺のリスクの上昇と関連があるとされた。しかし,偽陽性率が非常に高いことも判明した。モニタリングで異常が認められ,母親へのリスクとも関連づけられた場合には,実際には帝王切開となることが多い。そのためこの研究の結果,適応が広く普及した場合に,無益なばかりか潜在的に有害な帝王切開が増加することが,私たちの懸念するところとなった。
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