特集 母乳育児成功のコンセプト(下)
母子同室を実践する
鹿児島大学病院周産母子センター.赤ちゃんに最善のスタートを
大迫 圭子
1
,
先﨑 圭子
1
1鹿児島大学医学部附属病院周産母子センター
pp.871-876
発行日 1998年10月25日
Published Date 1998/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902029
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はじめに
当鹿児島大学病院周産母子センターでは,ユニセフ・WHOが提唱する「母乳育児を成功させるための10カ条」にある“24時間の母子同室”を実践して4年目を迎えた。私たちは今,福田1)の「誕生後数日間は,女性が母親になっていくための,そして赤ちゃんが母親を自分の最も信頼できる人だと認識するための,自然から授かった,まさに凝縮された数日間であると思う。たった数日間でどうしてと思うほど,母親は変わっていく」という言葉を実感している。
少年たちの問題行動が明らかになるにつれ,乳幼児期からの心の教育が言われるようになってきているが,“人の心のケア”の原点は誕生後間もない頃にあるのではないかと感じる。辛い陣痛を乗り越え,分娩を終えた安堵感の中で生まれ来たわが子を胸に抱くという行為は,母親の心に「どんなことがあってもこの子を守っていこう」という気持ちを起こさせるのではないだろうか。また,新しい環境に生まれ出た赤ちゃんにとっても,胎児の頃と同じように,母親が常に近くにいてくれる母子同室は,心強い環境であると思う。
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