特集 切迫早産—最近の治療とケア
切迫早産治療の問題点—主に診断基準と子宮収縮抑制剤をめぐって
武久 徹
1
1武久産婦人科医院
pp.570-575
発行日 1998年7月25日
Published Date 1998/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901969
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医療は,極力少ない検査や治療で最良の結果が得られるのが理想的である。言い換えれば,「できるだけ手をかけずに済む医療」が理想である。反対に,より有効と思われる検査または治療が多くの研究者によって研究され,実験的に日常診療に導入される場合があるのも止むを得ぬことである。しかし,実験段階的または有効性が十分に証明されていない検査や治療の採用は最小限にとどめ,それらの採用前には,十分な説明がなされるべきである。それが,真の「説明と同意」,“Evidence based medicine(証拠にもとづく医学)”であろう。
そのような観点から,わが国で日常行なわれている検査や治療を考察すると,疑問が残るものが散見される。例を挙げると,「正常妊娠の妊娠後期,1〜2週間ごとに行なうNST」,「分娩予定日から離れた妊娠週数に行なうB群レンサ球菌培養検査」,「妊娠中に行なうルーチンC型肝炎抗体検査」,「満期前に行なう骨盤位外回転術」などである。いずれも,その有効性を証明するevidence(証拠)が不十分であるばかりか,有害であることが証明されているものも含まれている(AGuide to Effective Care in Pregnancy and Childbirth 2nd ed, eds Enkin M, et al.p389, 1995, Oxford University Press, Oxford, UK.邦題「妊娠・出産ケアガイド」医学書院MYW刊)。
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