Medical Scope
胎児の発育と母体の自己免疫
島田 信宏
1
1北里大学医学部産婦人科
pp.899
発行日 1997年10月25日
Published Date 1997/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901807
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最近では「不育症」という言葉がよく使われています。何回妊娠しても流産や死産を繰り返してしまい,生児を得られない症例のことです。私たちは前回の妊娠が不幸な結果に終わってしまった女性の“今回は何とかして生児を抱かせてほしい”という願いを叶えてあげようと努力をするのですが,再び不幸な結果となってしまうこともあります。
突然の胎児死亡の主な原因は何なのかということを考えてみると,今日では第1位に胎盤や胎児のからだのなかの血栓があげられるということです。また,妊娠初期では絨毛細胞の障害から胎児が死亡することもよくみられます。そこで,妊娠14週以後に胎児死亡を経験した女性の抗リン脂質抗体の代表であるループス・アンチコアグラントや抗カルジオライピン抗体を調べてみると,何と44%もの方が陽性で,抗リン脂質抗体症候群と考えられることがわかりました。自己免疫抗体をもっていると,胎盤のなかで胎児の血管内に血栓を作り,胎児死亡に至らしめるということは皆さんもよく知っている通りです。この中では最も強力な働きをする抗リン脂質抗体の中の抗カルジオライピン抗体を44%の女性がもっていたということはいささか驚きの感がしませんか?
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