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はじめに
1990年に米国では妊娠中の母体体重増加量(gestational weight gain : GWG)の推奨値について,米国科学アカデミーの健康部門であるInstitute of Medicine(IOM)からガイドライン1)が出されていたが,その後,近年の妊婦の実態などに合わせる必要性から再検討が加えられ,2009年には800ページを超える報告書として改訂,公開された2).また2008年に米国医療研究品質局Agency for Healthcare Research and Quality(AHRQ)において旧IOMガイドラインの検証を含めた妊娠中の母体体重に関する報告が出ている3).いずれの報告も膨大な文献とデータをもとに緻密に検討が行われている.もとになるデータの多くは欧米人のものであるが,日本人の報告も含まれている.
GWGと児の出生体重に関係があるとする報告はこれまでにも内外から数多く発表されてきたが,このテーマに対する重大な問題点は,これらの報告はほとんどすべてが観察研究であり,介入試験は行われていないことである.すなわち,GWGを意図的にコントロールすることがはたして児の出生体重に影響を及ぼすか否かは現在のところエビデンスがない.この点に関してIOMでは妊娠中の推奨体重増加量のガイドラインを出すに当たって,「GWGと児の出生体重の関係を説明するために利用できる無作為試験は規模の小さい研究しかないが,委員会として,GWGは児の出生体重に関係する要因と推定した」として,これまでの多くの観察研究による報告をもとに結論している2).本稿の内容もまた観察研究のレビューによらざるを得ないが,主に日本人のデータを中心に示し,IOM,AHRQの報告も参照しながら胎児発育と母体体重の関係についてQ&A形式で述べる.
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