Medical Scope
胎児性ファイブロネクチンの早産予知検査法
島田 信宏
1
1北里大学医学部産婦人科
pp.352
発行日 1997年4月25日
Published Date 1997/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901694
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胎児性ファイブロネクチンはfFNという略語で示される物質ですが,早産の原因となる絨毛羊膜炎などのときに胎盤の絨毛細胞よりつくり出されるものです。つまり,胎児成分が産生する物質ということになります。胎児成分なので,普通では母体の子宮頸管内には存在しません。これが切迫早産や絨毛羊膜炎の状態になると,絨毛細胞からつくられた胎児性ファイブロネクチンは子宮頸管粘液の中に流出してくることが知られています。したがって,現在まで破水の診断にとても確実な診断法として用いられてきました。
最近になって,モノクローナル抗体という手法を用いて,この胎児性ファイブロネクチンの少量でも検出できる検査法がアメリカで開発されました。そして,妊婦の子宮頸管粘液中の微量の胎児性ファイブロネクチンの検出がテストされたのです。何の目的のために……と考える方もおいででしょうが,実は早産の予知につながらないかと思われたからです。アメリカのある大学を中心として多施設で大規模な研究がなされました。何らかの切迫早産の症状を示す妊娠24〜35週の725例の妊婦に検査しました。その結果,142例に胎児性ファイブロネクチンは陽性でしたが,このうち19例(13.4%)は検査後7日以内に,47例(33.1%)が28日以内に,61例(43.0%)が37週以前に早産してしまいました。反対に583例の胎児性ファイブロネクチン陰性例では,早産したのはわずか78例(13.4%)でした。
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