Medical Scope
妊娠と抗血小板抗体
島田 信宏
1
1北里大学医学部産婦人科
pp.268
発行日 1997年3月25日
Published Date 1997/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901678
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血液型不適合妊娠,殊にRh式血液型不適合妊娠での胎児溶血性疾患の発症過程を思い出して下さい。非常に稀ですが,まったくのRh(-)の初妊婦で妊娠初期に抗体のなかった妊婦が,そのはじめての妊娠中にRh式血液型の抗体が陽性になり,胎児は溶血性疾患にかかってしまうことがあります。このような初妊婦の母体感作の成立例は0.3%にみられるとされているのは皆さんもすでに知っていることでしょう。では,どうしてはじめての妊娠中に母体に抗体を作ってしまう現象が起きるのでしょうか。
それは妊娠中のある時期に経胎盤血が起きたからだと説明されています。ちょうど金魚鉢に金魚と水藻を入れている図を想像して下さい。金魚鉢の中の藻は細長い根をゆらゆらと泳がせています。ちょうど,この状態が胎盤の絨毛と絨毛間腔の関係なのです。金魚鉢の水は母体血で絨毛間腔であり,その中に何億という無数の絨毛(胎児成分が絨毛膜を形成するもの)がぷかぷか浮いているといった感じです。かなりの数の絨毛なので,そのうちの2つ,3つが妊娠中に絡み合って壊れたりする可能性は十分にあります。そうすると壊れた絨毛の中から胎児血が出てきて,絨毛間腔の母体血の中に流れ込んで,母体血中に混じり合うことになります。これが経胎盤出血です。したがって,妊娠中に母体血をよく調べると,胎児の血球がみられるという事実も決して不思議ではありません。
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